全盲の視覚障害者‘ぶちゃこま’です。
2023年9月に東京国立博物館の法隆寺宝物館に行ってきました。実は2023年5月にも訪問したのですが、勉強不足で見たい仏像にお会いできなかったのです。今回はそのリベンジ訪問。10月におとずれた野中寺の弥勒菩薩もあわせての訪問記です。
▼ トーハク法隆寺宝物館の仏像 ▼
飛鳥・白鳳文化を中心に6体
- 如来座像(145号)
- 如来立像(149号)
- 菩薩半跏像(155号)
- 菩薩立像(165号)
- 観音菩薩立像(176号)
- 観音菩薩立像(179号)
▼ 野中寺 ▼
- 弥勒菩薩半跏像
目次
法隆寺宝物館(東京国立博物館)訪問の目的
見えない私は見える夫と仏像をめぐる旅をしています。ここまでに、飛鳥寺(安居院)の飛鳥大仏と、法隆寺のいくつかの仏像、深大寺の釈迦如来倚像にお会いしてきました。
現在は、飛鳥文化の仏像、それから飛鳥文化と白鳳文化の境となるであろう仏像、白鳳文化の仏像をたどっているところです。そのポイントとなる仏像が「法隆寺献納宝物」の中に多く存在します。ところが、法隆寺の仏像にお会いする段になって、法隆寺所蔵の仏像と法隆寺献納宝物の違いにやっと気づいた次第。
「法隆寺献納宝物」は、法隆寺から皇室に献納した宝物なので、ただいまの法隆寺にはありません。国有化されて東京国立博物館にあります。ってなわけでお江戸です。しかも、同じ目的で二度目の訪問。お会いしたい仏像のお名前よりも、管理番号(?)のほうが鑑賞には断然大事でした。
止利様式の復習
仏像をつくられた順に鑑賞しています。飛鳥文化から白鳳文化にかけての変遷は、止利様式の有無がポイントになるようですので復習をしておきます。
▽ 止利様式の特徴 ▽
- アルカイックスマイル(目を見開いて微笑んでいる)
- 表面鑑賞性(横や後ろからは見ないでねみたいな)
- 左右相称性(衣装がシンメトリーにきちっと)
今回の訪問で鑑賞する仏像の中で、止利様式の特徴が強く出ている仏像は以下の3体です。
- 如来座像(145号)
- 如来立像(149号)
- 菩薩半跏像(155号)
そして、表面鑑賞性と左右相称性は残すものの、アルカイックスマイルが消える仏像がこれ。
- 菩薩立像(165号)
この仏像はつくられた年代がはっきりしているということで、美術史的にとっても大切な仏像なのだそうです。
さらに時代が進んで白鳳文化のころになると、童顔童形といってとってもかわいい表情や姿の仏像が登場します。それがこちら。
- 観音菩薩立像(176号)
- 観音菩薩立像(179号)
では行ってみよう!
トーハク法隆寺宝物館の鑑賞記録
今回は事前準備バッチリ。お会いしたい仏像の管理番号(?)をきちんと調べて挑みました。
お寿司のエビだと思えばいいよ(=止利様式)
止利様式の特徴をイメージするとき、アルカイックスマイルは中学校の歴史で勉強させられたので想像がつきます。左右相称性も言葉の意味からまあわかります。けれど表面鑑賞性ってなに?となると思います。
表面鑑賞性を知りたいときは仏像の後姿を見るとよろし。まっ平らです。前からだけ見てね、後姿はご勘弁といういでたちをしていらっしゃいます。
私の夫はその姿を「お寿司のエビ」と表現したのよね。お寿司にのっているボイルエビのことです。中央で開かれて平べったくなっているでしょう。あれに似ていると言うのです。見えない私にとってその表現はわかりやすかったけれど、仏像ですよ。お寿司のエビってちょっと失礼じゃない?と思いつつもおかしくて、静かな博物館内で笑いをこらえるのが大変でした。
本当だ、笑顔が消えた(=飛鳥文化の終わり)
お次は超大切な仏像だからと慎重に探します。事前の調べでは展示されているかどうかがわからなかったからです。でも、無事にお会いできましたよ。
その仏像とは165号の菩薩立像。台座の正面に銘文があって、つくられた年代がわかる仏像です。そして止利っぽいけれど笑顔が消えているはず。そのあたりのことを夫に確認してもらいました。
この仏像がどうしてそんなに大切かというと、つくられた年代がはっきりしている仏像の中で止利様式を残しているというか、消えかけているというか……。飛鳥文化と白鳳文化の境が何年かを推測するために有益な仏像らしいです。
こちらの165号の菩薩立像は飛鳥文化の終わりを、のちほどおまけで紹介する野中寺の弥勒菩薩半跏像は白鳳時代のはじまりを推測させる大切な仏像なのだそうです。
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うわっ、かわいい(=童顔童形)
最後は童顔童形の仏像。これは見るからにかわいいらしくて、夫は思わず「かわいいっ」と声を上げていました。私も見たかったわあ。
夫に、台座の子弁が平らであることにも注目させます。それがどうしたということだろうけれど、見えない私が特徴を調べて、見える夫が現地で答え合わせをするというこのシステムは、私たち夫婦にとってはなかなかおもしろくもあるのです。
わずか30分で飛鳥時代のおさらいができる!
どうしても法隆寺の釈迦三尊像に会いたいのだというときは現地に行かないといけませんが、飛鳥時代の仏像の変遷を見たいのだというときは東京国立博物館の法隆寺宝物館がおすすめです。止利様式の仏像が確認できるうえに、菩薩立像(165号)で飛鳥文化の終わりをおさえられますし、白鳳文化の童顔童形の仏像にも会えますから。
この、飛鳥から白鳳までの仏像を鑑賞するのに、たったの30分でした。これを現地でしようとすると、明日香と斑鳩を2日は歩くことになります。歩いたけどね。歩いたからこそ30分で済んだのかもしれないし、現地は現地のよさもあるけれど、東京国立博物館のコンパクトさも評価できると思いました。
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おまけの野中寺・弥勒菩薩半跏像の鑑賞記録
東京国立博物館とはなんの関係もありませんが、このあと10月に出かけた大阪旅行でお会いした弥勒菩薩半跏像についてもここに書かせてください。上でお話したとおり、トーハクの法隆寺献納宝物中の165号の菩薩立像と、野中寺の弥勒菩薩半跏像は、仏像をつくられた順にめぐっている私にとってセットになる仏像なのです。
野中寺は大阪の羽曳野市にあるお寺です。月に一度の拝観日にだけ所蔵する弥勒菩薩半跏像にお会いできます。この希少性からお会いするのは厳しいかとあきらめそうになったけれど、やってみればできるもので、無事に鑑賞できました。
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おわりに
全盲の視覚障害者‘ぶちゃこま’の2023年9月の東京国立博物館・法隆寺宝物館と、おまけの大阪・野中寺訪問記でした。
東京国立博物館では事前準備の大切さを思い知らされましたが、準備さえしていけば大変に価値のある訪問になることもわかりました。博物館のほうでは何号の仏像がどこにいらっしゃるかの案内がされていますので、管理番号(?)を把握していればすみやかに鑑賞できます。
野中寺に関しては、仏像にお会いできたことよりも自分の行動力のほうに感動しているところです。この先も、仏像をめぐる旅が続くようにがんばりたいと思います。
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おわりっ!